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今日は、G生命保険会社保険アクチュアリー、Ⅰさんに、さっくばらんに、公的年金と生命保険について、語っていただきたいと思います。残念ながらインタビューは、ビデオで行いましたが、諸般の都合により文章(テキスト)によるものとして、掲載させていただきます。
IさんはG生命現役アクチュアリー、現役アクチュアリーとして20年ほどの保険数理に携っていらっしゃるベテランです)
○民間の保険と公的年金の仕組みの違い
D.こんにちは、今日はお忙しい中インタビューに応じていただきまして、ありがとうございます。
まず初めにお聞きします。民間の保険と公的年金についての違いを、専門家の立場からみてどういう風にとらえられていらっしゃいますか?
I.基本的には、保険料を払う、保険金(年金)を貰うという関係が厳密になっているものが民間保険、払った保険料と貰う保険料は密接な関係があります。ところが、その関係がかならずしも厳密でないものが公的年金、そんな感じでしょうか。
公的年金は、給付と負担の関係が厳密でないが故に、財政的な問題が生じています。
ただ、公的年金も民間の生命保険も同じように人により損得は発生するという意味では同じです。民間の終身年金等でも、60歳で亡くなった人と、80歳で亡くなった人の場合、受取額の損得が終身年金では生じてきます。保障期間(死亡の時期に係らず年金が保障される期間)があったとしても、それを超えれば損得は発生するのはどうしても避けられません。
(編集者注・・・公的年金は賦課方式(世代間扶養方式)、といわれますね。親の世代を子が、子の世代を孫が見る。働ける世代が働けない世代の面倒を見る。上手く運営されれば非常に良い制度なのですが、上のお話のように、どうしても保険料に対して厳密に給付が決まるわけではないので、財政的問題が生じたり、給付の世代間格差に不満が生じたりします)
D.公的年金のメリットとして、インフレに対する適応(物価スライド)があるのですが、民間保険についてはどうでしょうか?
I.民間保険も、最初の予定利率(注))を低くして、配当を高く持っていけば、ある程度インフレに適応する形のものを作る事ができます。
バブルの頃には生命保険の予定利率がとても高かったのです。こういう場合は運用が上がってもその分は本体の支払いに充てられ、プラスアルファとしての配当は発生しない、最初にパンフで説明のあったとおりの受取額に近くなります。現在のように予定利率が低い場合には(本体の支払いに充てる以上のものが発生するので)、配当金によりインフレに対応する商品の設計も可能かと思います。金利が上がれば、その分配当が増えるという関係ですから。
(編集注・・・予定利率・・保険料を運用して得られる予定の利率のこと、バブル期はこれが高すぎてバブルがはじけてからその額を保障できなくなり保険会社がばたばたと経営破たんしました。予定利率が低いと、以下に述べられる「保険商品の見た目の魅力がなくなる」という欠点が生じるため、営業的にはかなりのマイナス。低ければよいというものでもないので難しいところです)
D.昔は、民間の保険について、保険料を払うときは、結構負担が大変だけど、いざ貰うときになると額がこんなもんか?と不満を言うお客さんが言われるようなことも結構ありましたよね?
I.確かに、据え置き期間が長いと不満はでてきますね。その点は国の年金制度のほうが良いのですが、国の制度はかなり無理しているように見えます。これから先はどうなのでしょうか。政府も公的年金制度を考えるとき、将来の人口推計を甘めに考えていた部分もありますし支給額は減るかも知れない。最近はだいぶその辺について現実を見据えて将来の事を検討するようになっているようですが。
D.一部に、公的年金は不用で、民間の保険商品で賄えるのではないか? ということを言う人が居ますが、専門家的にはどうですか?
I.確かな老後に備える場合は、やはり公的年金に民間の生命保険をセットするのは必要だと思いますよ。今はものすごく長生きする時代ですから。
○みんな凄く長生きになっているのは、数字を見ればわかる
D.そういえば終身保険(終身保険)の前提は以前、99歳で全員死ぬという前提で作られていたということでしたが?
(編集注・・・民間の終身保険(生涯保障される保険)は数理上 ○歳で全員が死ぬという仮定で設計されます。もちろんその仮定年齢以上生きられる方もいらっしゃいますが、それは「誤差」の範囲として保険数学上は無視しても保険が成り立つのだそうです。そこの死亡を仮定する年齢がどんどん上がっていっている)
I.今は110歳とかで終身保険を設計していますよ。
D.じゃ100歳じゃ全然足りない?
I.全然足りないですね。
D.へー、すごいですね。今は100歳まで生きていても、日本国内では数学の統計上それは誤差(通常は無いレアケース)になる程度の少人数ではなくなったのですね。凄い高齢化の進展ですね。
I.本当に長生きしますからねえ、みんな。
D.保険を作る現場で実際にそういった数字を見ていると感じますか?
I.そうですね。
D.お年寄りが長生きするようになっただけが要因でしょうか?
I.若い人の死亡率も下がっています、確かに自殺による死亡は増えていますが、其の他の疾病による死亡率は下がっています。若年者のがん等も死亡率が下がっています。
D.昔の人は自然のものを食べていたけれど、最近の若い人はそういうものを食べてないから長生きをしないのではないか? とかいろいろ言われていますけれど、それより、医療技術の進歩のほうが遥かに上回っているのと考えてよいのでしょうか?
I.それはあると思いますよ。
○老後の備えについて
D.老後の備えについてお伺いします、公的年金と民間の保険両方入ったほうがいいでしょうか?
I.それがベストだと思います。(人によりですが)公的年金だけでは額的に不安ですし、民間の生命保険は前に述べたように、公的年金とは仕組みが違うので補完しあう関係です。そこの違いを理解して、両方加入し(公的年金は強制加入ですが)ベストな老後の備えをしたほうが良いと思います。
D.公的年金を考えず、民間保険で、老齢、遺族、障害、を全部網羅するような保険を作ったらどうなるでしょうか?
I.詳しく計算していないのですが、今の公的年金の給付額の水準を考えるとものすごく保険料が高くなることは十分予想されます。それに、公的年金は、保険料の国庫負担や、保険料を勤めている企業が払っている部分もありますから、紙一枚すべてを会社が負担する民間の保険より当然有利であるということもありますから。
D.老後に対する備えを預貯金で持つ事についてはどうですか?
I.これはリスク高いですよ。預貯金の取り崩しというのは、長生きしてしまったら、途中でお金がなくなるということ。これじゃそれから後どう生きていくか? ということを考えると非常に不安です。老後を支える仕組みとしての年金は、公的年金や民間保険会社の商品(終身型商品)という区別に係らず、老後に備えるという点では有効なものだと思います。平均を超えて長生きしすぎた場合の、経済的リスクを取り除くという機能がありますからね。
D.終身年金というものは商品設計として、作りづらいものですか?
I.そうでもないですけれど、最近の経済状況、これだけの低金利だと作りづらいというのはあるかと思います。金利が低いと、全然保険料の支払額とその後受取額との差があまり出なかったりしますから。適度なインフレのほうが、そういう意味では商品は作りやすいです。受取額が増えるのでパンフレットの見栄え等も違ってくるんですね。
D.掛け捨て保険はもったいないというのは、よく言われます。でも、およそ保険である限り、必ず掛け捨ての部分がある。払っている保険料を上回ってくる戻りがあったとしても、必ず掛け捨てという部分が発生している。その辺が一般のお客さんにとっては、わかりにくいと思いますが?
I.そうですね。生命保険の保険料は、満期でお金が返ってくるようなタイプの保険であっても、その保険料の中には、積み立てに充てられる部分+掛け捨で保障に使われる部分(保険料の中に占める率は低いが、死亡した場合や障害の場合の保障に充てられる)+会社の経費という形で成り立っているわけですから、掛け捨て保障の部分(死亡保障部分)と会社の経費部分については確実に掛け捨てになっているんですね。そこはお客様がとても誤解しやすいところだと思います。
D.本当に金融、保険というのは素人にはわかりにくい部分が多いですね。
I.わかりにくいといえば、銀行も判りにくいです。銀行は預金を貰っても預金に関する経費は貰わない(利ざやで稼ぐ)ので、利回り比較で言うと、保険会社より低いのが一般ですがそんなことは普通の人にはわからない。生命保険より、銀行に預けるより利率がいいからって説明されると間違いって事もあるわけです。中に含まれているか、別立てで計算するか、一般の人にはこういうことを比較するのが難しいですよね。
(編集注・・・世の中には、民間の保険は掛け捨てではないのに、公的年金は掛け捨てに近いもの(早期の死亡による保障が無い)という不満を述べられる事があるのですがそれは不正確だと思います。上のように、掛け捨てで無い保険もばらしてしまえば、満期等での支払いの積み立て+掛け捨てになっている。でもその不正確な情報が独り歩きしている気がします、保険というものが何であるかという本質を考えればそこはわかるのですが)
D.今日はお忙しい中どうもありがとうございました。また日を改めまして、続編としていろいろとお伺いしたいと思います。
編集後記: 正直言って、アクチュアリーの方の話は、数学の話ですから、苦手なものという前提があったのですが、数字には関係なく割と簡単なことを丁寧に語っていただいて、とてもわかりやすかったです。
以前から、声を大にしていっているのですが、「民間の保険と公的年金は競合しない、補完しあう関係だ」ということは、保険会社の中にいる方にとっても共通の認識である事がわかって、かなり心強い気がしました。しかも、公的年金を扱う側から言っても、昨今の年金水準では「ちょっと足りないな」という人が増えてきているのは事実でもあります。
個人向けの保険セールスに、年金を絡ませてご提案を差し上げるのはこれからのライフコンサルティングには不可欠な気がします。
あと、年金を仕事とされている方で、生存率や死亡率を日々業務とされている方が、しみじみ「日本人は長生き」ということを、「繰り上げ支給の説明」や「任意加入の説明」に思い出してみられるのも良いのではないでしょうか?。
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